保存情報第79回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 旧国鉄中央本線 廃線トンネル群(高蔵寺〜多治見) 山上 薫/山上薫建築事務所

土岐川の向こう岸上に廃線ライン

5号トンネルと庄内川

4号トンネル

5号トンネル
所在地:春日井市庄内川沿い 
    多治見市土岐川沿い
構 造:レンガ造( イギリス積み)
建設年:1900 年(明治33 年)完成
指 定:未指定
ホームページ: http://www1.odn.ne.jp/tonnerusaisei/
■発掘者のコメント
 旧国鉄中央本線は1900年(明治33年)に名古屋、多治見間が開通した。その時、高蔵寺、多治見間(約12㎞)の庄内川及び土岐川渓谷沿いに14基(総延長2.7km)の赤レンガ積みの単線トンネルが掘られた。急峻な山裾の険しい地形において岩盤をくりぬくという難工事で、二十数名の死者が出たと言われる。
 その後1966年の複線電化の際、廃線となってからは、線路敷きとトンネル(9号は解体、現存13基)の大部分は樹木と雑草に埋もれて放置されてきた。
 昨年6月、春日井市民を中心に「旧国鉄トンネル群保存再生委員会」(会員約60名)が発足した。保存のための産業遺産や登録文化財の認定と、周辺のすばらしい景観の中、市民に開放された遊歩道としての活用を目指して、活発な活動が展開されている。
 これまでのところ、土地所有者の了解のもと、会員有志によるライン整備隊が生い茂った樹木や雑草を整理し、三つの部会に分かれた会員が、基礎的な調査活動を行っている。保存状態は比較的良好のようである。会員は20〜80才代と幅が広いが、定年後の60才代が最も多く、比較的時間に余裕のある人たちは、毎
週2〜3日、現場に通って活動している。なお今年度より多治見市民も参加することとなった。
 今年、トヨタ財団とあいちモリコロ基金の助成が認められ、会員の志気もあがっている。 目的が成就するまでには、まだ長い道のりが予想されるが、会員の一人として、楽しみにしている。
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 日置神社とその境内 水野 威/ミズノ設計室

南正面 神明鳥居

境内全景 手水舎
■発掘者のコメント
 名古屋城下町の南限にあり、仏壇通りで有名な本町通り(旧街道 美濃路)の西にある。宮の宿と名古屋の宿との中間点あたりに位置する。創建は不詳とのこと。永禄3年5月、織田信長が桶狭間へ出陣の途次に戦勝を祈願したと伝えられる由緒ある古社であるようだ。
 新年の初詣、夏には茅の輪神事(輪くぐりといい、身に付いた穢れを祓い、無病息災を祈る)などの年中行事に地域住民が集う氏神様である。その折に幼なじみや思いがけない人に出会ったりすることもしばしばあり、最近は、地域の社交場としての場にも成りつつある。
 近年、名古屋駅前地区のJRタワーをはじめとして開発が進み、高層、過密化して変貌する都市の中で、ややもすると忘れがちな都会の中に静かな佇まいを残し、ホッと出来るこんな小さな空間がとても気に入っている。外国では味わうことの出来ない空間。それは日本固有の信仰である神道から生まれた「日本の文化」そのものであるからかとも思う。
 大きな神社仏閣ではなく、地域に根づいたこのような氏神様はこのあたりに思い当たるだけでも10社ほどある。このような場所が、現代社会において今問われている地域社会の連携の場とか、コミュニティーの場などにもっと活用されるのもよいのではなかろうかと思う。
 皆さんも地域のこのような場に出向き、思いがけない人との出会いに期待しませんか。
 発掘データとは少々離れたものかもしれません。が、都会のこんな佇まい、空間をいつまでも残したいものです。
所在地:名古屋市中区橘1-3-21
主祭神:天太玉命(あめのふとだまのみこと)

茅輪神事:7 月15 日( 参考まで)
名古屋市特別緑化地域指定